2002年春号(通算第16号)


『スピード』

 花見の準備をする間もなく、桜の季節になりました。
 2月下旬に日本重化学工業(金属関係の一部上場企業)が会社更生法の申請をした事件で、裁判所から保全管理人団に選任され、関連15社の更生事件を分担しています。私の担当は国際関係ですから、海外合弁工場、輸出入の商流、ライセンス契約の保全などです。1ヶ月を経てようやく一息。
 裁判所の意向は、会社更生法の改正を先取りするようなスピードで、とのことです。それでも、保全管理人団がそのまま更生管財人団に選任されるので、一年ほどは会社再建のためこのチームでの仕事が続きそうです。
 来年の4月には、この法律も新しくなります。
                                      平成14年春 湯川

マンション管理適正化法

 我が国における平成12年末のマンションストック戸数は、約386万戸にのぼり、そこに居住している人は1000万人を超える。しかも、毎年15万戸以上増加し続けており、今やマンションは国民生活に定着した重要な住居形態といえる。
 しかしながら、1つの建物に多くの区分所有者が居住するマンションには、戸建住宅には見られない多くの課題がある。例えば、1.区分所有者の価値観の相違から集団的な意思決定が困難であるとか、2.建物の高層化・大規模化に伴い、マンション管理が複雑化しているにもかかわらず、マンション管理の疑問に応えられる相談体制が不十分であるとか、3.マンションの劣化に対する計画的かつ適切なメンテナンスが不十分であるとか、4.管理組合と管理会社との委託契約に伴い、トラブルが発生しているといった様々な問題が提起されている。
 このような諸問題に対応するために、平成13年8月1日、「マンション管理の適正化の推進に関する法律」が施行された。同法の骨子は、1.管理組合による管理の適正化を確保するために管理組合の運営のアドバイザーとしてのマンション管理士を創設したことと、2.マンション管理業の適正化のために任意登録制を改め、マンション管理業者の登録を義務付けたことにある。前者のマンション管理士については国家資格とし、信用失墜行為の禁止(40条)、5年ごとの講習受講義務(41条)、秘密保持義務(42条)等の規定をおいた。また、後者のマンション管理業者に対しては5年ごとの登録義務付け(44条)の他に、各種の業務規定(72、73、76条等)、情報開示(79条)、業者指導(83条)等の規定をおいている。
 同法に基づいて、平成13年12月、マンション管理士試験が実施され、平成14年1月に合格発表が行われた。予想以上に多くの受験者数にのぼったこともあり、合格率は7.4%の狭き門となった。
 いよいよ平成14年4月からはマンション管理士が活動を開始する。日常的な管理組合をめぐるトラブルについて、マンション管理士が日常的なアドバイスをする役割を果たすことにより、マンション管理の適正化が図られることを期待するものであるが、他方で、積み残した課題もある。それは、第一に、管理会社から派遣されてきたマンション管理士がアドバイスするときに、本当に管理組合の利益に適ったアドバイスをしてくれるのか、マンション管理士の独立性をどういう方法で確保していくのかといった問題である。第2に、マンション管理士が独立した業務として成り立つのか。良い器はできたが、その中にどのようなものを盛り込むかについては、これからといえる。
 マンション管理士が今後どのように活用されるかは、管理組合側の要請とマンション管理士の資質いかんによることになろう。  (佐原)