1995年冬号(通算第3号)
謹んで新年のお慶びを申し上げます
旧年中のご厚誼に感謝し本年も宜しくお願いいたします。
年賀状の風習は大好きで、うれしいものです。「パンフレットではつまらない。」とおっしゃる方もおられたかと思いますが、貴家のご多幸をお祈りしてご祝辞といたします。
司法試験の制度改革で、弁護士の増加が見込まれております。司法試験があまりにも難しすぎて法律しか知らない人間が法曹になっているのが現状ですが、今後はもっと多彩な弁護士が誕生することでしょう。
高い倫理観と万全の法律調査に根ざして円満な法的解決をめざす、そのような事務所にしたいと思います。
平成7年 正月 湯 川
行政指導
行政手続法が施行されたことについては前ページの通りです。施行前にアルバイトスチュワーデスの採用問題で運輸大臣発言からこの新法が脚光を浴びたので新法にとっては幸運な滑り出しでした。(日経ビジネス1994年8月29日27頁以下参照)
さらに、経団連行革推進室は、11月22日、行政指導110番の事例を公開しました。事案は、天草ガスという一般ガス業者がガス供給区域の拡張許可申請を行ったのに対して、通産局が、法令では求められていないのに「LPガス事業者と事前協議した経緯の報告書」を添付しなさいと行政指導して申請を受理しなかったものです。行政手続法に基づいて天草ガスは、「行政指導を文書として交付する」ことを求めたところ、これも断られてしまいました。この事件は、経団連行革推進室の公表によって直ちに「申請受理」となったそうです(NBL559号72及び74頁)が、その後補正を命じられたかどうかはわかりません。
私は、独立前の法律事務所で外資系企業の日本でのいくつかの許認可申請を手伝っておりましたので行政指導のなんたるかについて一応の経験を持っています。また、コーヒーの自動販売機を設置するために一体いくつの許認可が必要なのか聞かされて驚いたこともあります。
日本においては、行政書士さんの活動が活発とはいえず、許認可官庁の窓口指導が圧倒的優位です。それが、「政治献金によって何とかしよう。」とか、「監督官庁からの天下りを受け入れることによって何とかしよう。」という非法律的解決に依存させている原動力でした。
「依らしむべし、知らしむべからず。」という古典も、権威主義者的解釈のままに行政指導の基準は官庁の外には教えない事を正当化するかのようにつかわれました。
しかし、この古典は、民度の低い時代において「教えてもなかなか分かってくれない。」と言う孔子の嘆きの言葉であるとする解釈もあるのです。わたしは、こちらの古典解釈に賛成します。そして、行政書士さんたちがもっと活躍するよう願っています。 (湯川)
クレセントアカデミーでの講演
昨年11月4日、中央大学講師の仕事は大学祭でおやすみでした。そのかわり、クレセントアカデミーと言う中央大学の社会人教育機関から講演依頼があり、「国際法務の諸問題」を講演させてもらいました。
外国弁護士の話から始めて、株主代表訴訟だとかPL法だとかの最近の日本での新法とそれらのルーツも説明しました。けれども、日本が間もなく訴訟社会になるかについては、@クラスアクションがない、Aピュニティブダメージがない、Bコンティンジェントフィーシステムがない、C内容証明郵便制度がある、事から否定的であると結論しました。詳しくは、またそのうちご紹介します。日本が訴訟社会化してしまったら、忘れて下さい。 (湯川)